2022年03月21日
ヘッドライトで車検落ち!?現役整備士が検査基準や注意点について実例を交えて解説
車検の検査項目にヘッドライトが入っていることはご存知でしょうか?
2015年の法改正で検査方法の変更があった他、より厳しい検査基準になっており、旧基準では検査適合していたのに法改正の影響で検査不適合となるケースも増えてきました。
この記事では改正された検査基準や注意点、車検に通るにはどうすればいいのか解説します。
2015年に変更になった検査基準
2015年9月1日に法改正がありましたが、旧基準は以下の通りです。
測定条件
ハイビームでの計測
光軸の位置
照らす方向が合っていれば合格光量最も明るい部分が1mと10mで違いない
色の基準
黄色、白色、淡黄色(オレンジのような色) この旧規格は現代の車であればヘッドライトの玉切れや劣化による光量不足でなければ光軸の位置を修正すれば車検に合格していました。 しかし法改正により以下の基準に変更されます。
測定条件
ロービームでの測定
光軸の位置
前方10mを照らした際、エルボー点が規定の位置にあること
光量
1灯につき6400カンデラ以上
色の基準
白色、淡黄色
旧基準から大きく変更となったのが測定基準で、ハイビームからロービームで測定になりました。
変更になった主な要因としては夜間走行時に主に使用するのがハイビームからロービームに変わってきている為です。
本来であればハイビームは通常走行用、ロービームはすれ違う際に使用するためのライトでしたが、交通量が増えた現代において常に対向車がいる状態であることが多く、ハイビームを使用する場面が減ってきました。
そのためロービーム重視の検査基準に変更となったのです。
ヘッドライトの保安基準
さきほど軽く触れましたが、ヘッドライトの保安基準を大きく分けると3点です。
- 光度、色
- 光軸などの照射範囲
- 点灯状態、ヘッドライトの状態 です。
光度、色
ヘッドライトの光度の規定は1つのライトに対し6400カンデラ(カンデラは光の明るさを表す単位)以上の明るさが必要と定められています。
これは電球そのものの光度が6400カンデラ以上あればいいと言うわけではなく、ヘッドライト内のリフレクターで反射した光度を計測し、6400カンデラ以上の光度が必要ということです。
いくら明るい電球にしていてもヘッドライトそのものの状態が悪く、光度が出なければ車検には通りません。
色に関しても白色か淡黄色と規定がありますので、自分で球を交換される方は注意が必要です。
色に関しては色温度(ケルビン)を参考にしながら購入すると失敗は少なくなります。
ケルビン数が低いと黄色みがかかった色になり、高くなるにつれて青みががってきます。
ヘッドライトに使用する場合は4000~6000ケルビンの球であれば色については問題ないでしょう。
光軸などの照射範囲
ヘッドライトの測定項目に「カットライン」があります。 このカットラインを適切な位置に調整することを光軸調整といいます。
分かりやすく解説するとロービームを点灯させると、ある点から左肩上がりに光が照射されています。 (夜壁などに照射すれば自分でも確認できます。)
この左肩上がりになる前の点をエルボー点といいます。 これは走行中に歩行者の様子をよく見えるようにし、反対側は対向車が眩しく無いようになっています。 したがってヘッドライトテスターで計測した時にこのエルボー点が規定の位置にあれば車検適合となります。
点灯状態、ヘッドライトの状態
ヘッドライトが点灯していなければ当たり前ですが、車検には通りません。
また光度が安定していない状態や光がちらついている状態でも車検に通りませんので注意しましょう。
またヘッドライトカバー(ヘッドライトの表面)に割れや亀裂がある場合も車検に通りません。 これらは自分で目視での点検も可能ですので球切れ、ヘッドライトの割れを発見したらガソリンスタントや整備工場に相談し、早めに対処しましょう。
車検落ちするのはこんなヘッドライト
ヘッドライトの基準から大体車検に通らない場合について理解してもらえたかと思いますが、経年劣化などにより車検に通らなくなることもあります。
- ヘッドライトカバーの黄ばみが原因
- ヘッドライトカバー表面の小傷が原因
- 光軸調整の不具合
- レベライザーの不具合
これらは車が新しいうちは問題ありませんが、古くなってくると車検に通らなくなってしまう場合があります。
ヘッドライトカバーの黄ばみが原因
ヘッドライトカバーはポリカーボネート樹脂素材が使用されています。
この素材はガラスより強度が強く、衝撃で破損した際に破片が飛び散りにくいなどのメリットがありますが、紫外線に弱く傷がつきやすいというデメリットも存在します。
特に屋外の駐車場に車を停めている方は紫外線に晒される時間が長いため、黄ばみやくすみが出やすくなります。
黄ばみによる弊害
この黄ばみが発生すると下記のような弊害が発生します。
光度不足の原因
黄ばみにより光が遮られ、光量が足りなくなり、光度が出なくなる。
カットラインがでない
表面の黄ばみにより、カットラインが確認できなくなる。カットラインがでなければ、エルボー点も確認できないので車検に通らない。
軽度の場合市販のヘッドライト専用クリーナーを使用し自分で除去することも可能ですが、不安であればガソリンスタンドや整備工場などのプロに相談してみましょう。
ヘッドライトカバー表面の小傷が原因
走行時に飛び石などを受け、細かい傷がつくとだんだん磨りガラスのようになってきます。 この状態になってしまうと黄ばみと同じく光度不足や、カットラインが出ないことで車検に通らない状態になってしまいます。 軽度の場合はヘッドライトカバーを磨き、コーティングすることで良くなることもありますが、この処置を行っても車検不適合の場合、ヘッドライトを交換する必要があります。
光軸調整の不具合
ヘッドライトの光軸は走行中の振動などで徐々に狂ってきます。
この状態で調整もせずにユーザー車検(自分で整備し、自分で車検場に持ち込む方法)に行くと、調整していないため車検に通らない場合があります。
また調整のギアの嵌合が悪くて調整ができない場合や、事故などでギア部の破損があり調整できないことがあります。
調整ギアのみ交換、修理できる車種はプロに修理してもらえばいいですが、ヘッドライトそのものを交換しないと治らない車種も多くあります。
レベライザーの不具合
運転席のメーターパネル周りや、オーディオのしたの方に0~3の表示のあるギアを見たことはありませんか?
車種によって異なりますが、これはヘットライトのレベライザーで上記のようにギアを操作することでヘッドライトの照射角度を変更できるものをマニュアルレベライザー。
車体下部に取り付けられ、車体の状態に応じてオートで照射角度を調整するオートレベライザーがあります。
このレベライザーは車体が坂道や下り坂で上下する際に、対向車が眩しくならないようにあるものですが、このレベライザーが故障すると光軸調整をしても規定範囲内に収まらなくなることがあります。 この場合、レベライザーの交換かヘッドライト本体の交換が必要になります。
ヘッドライト交換にかかる費用は?
ヘッドライトそのものに問題があればヘッドライトごと交換する必要があります。
ヘッドライトの交換工賃の相場や、部品の相場をお伝えできればいいのですが、車種によりかなり異なります。
ボンネットを開けて、ボルトを外せばヘッドライト交換ができる車種もありますし、フロントバンパーを外さなければ交換できない車種もあります。
また、ヘッドライト本体も従来の球とヘッドライトが別々なものと、LEDユニットがヘッドライト本体に内蔵されているのもなど多種多様です。
いずれにしても交換工賃を入れて5万円~の費用がかかる場合がほとんどですので、かなり高額な出費となります。
まとめ
ヘッドライトの不良で車検に通らない場合について解説しました。
まとめると、2015年の法改正によりハイビームからロービームでの計測に変更され、検査基準も厳しくなりました。
黄ばみや小傷などは早めにプロに相談すればヘッドライト交換などの痛い出費を防ぐのに有効ですので、ガソリンスタンドや整備工場に気軽に相談しましょう。