2022年05月25日
車検でブレーキパッドの交換は必要?交換の目安や費用を整備士が解説
車検時によく「ブレーキのパッドの残厚が少ないので交換しましょう!!このままでは危険です!!」などと言われ、それならと交換されている方も多いのではないでしょうか?
しかし、ブレーキパッドと言われてもブレーキ関係なんだろうな…。
くらいの認識の方が多いのも事実です。
今回の記事ではブレーキパッドの交換が必要なのか、交換の目安や費用を現役整備士の私が解説します。
ブレーキパッドの交換の目安
ブレーキパットの交換の目安は、車検整備時に4mm以下であれば交換をお勧めしています。
ブレーキパッドの残厚が少なくなればなるほど、減りが早くなるためです。
新品のブレーキパッドは大体10mm程度の厚みがあります。
ブレーキを踏むたびに、ブレーキパッドの厚みは減っていきます。大体平均的なブレーキの踏み方の場合1万kmで1mm程度減っていくのですが、ブレーキパッドの残厚が少なければ少ないほど減りやすくなってしまいます。
これはブレーキパッドの残厚が薄くなってくると、熱をもちやすくなる為です。
この現象は残厚が5mm程度から急速に発生していくので、4mmあればあと4万キロ程度で無くなると思いがちですが、実際には平均2万km程度しか持ちません。
また「キーキー」音がする場合も早めにブレーキパッドを交換した方がいいでしょう。
ブレーキのパッドの残厚がかなり減っていることを知らせるために「パッドウェアインジケーター」と呼ばれるものが取り付けられている車がほとんどです。
このパッドウェアインジケーターはブレーキパッドの残厚が使用限界近くに達すると、ディスクローター(金属の円盤状の部品でブレーキパッドはこのローターに押し当てられてブレーキが効いている)にパッドウェアインジケーターが接触し、キーキー、ゴーゴーなどの異音をわざと発生させます。
この機能のお陰で最悪の状態を防ぐことができますが、ローターにパッドウェアインジケーターが接触しますので、当然ローターに傷が入ります。
傷が入ればブレーキパッドの交換と共にブレーキローターの交換も必要となり、より高額な修理となりますので、なるべく車検時にパッドの残厚が4mm程度なら交換してもらっていた方が無難ですね。
ブレーキパッドの交換費用
実際ブレーキパッドの交換にはどれくらいの費用がかかるのでしょうか?
もちろん車種によっても異なりますが
- 軽自動車 6000円~
- 普通車 7000円~
くらいが部品代で工賃は5600円~の場合が多いです。
また、点検時に実施すれば工賃が無料または値引きになる整備工場も多いです。
スポーツカーや高級車、ミニバンなどはブレーキパッドが大きかったり、材質の関係で部品代が割高であることが多いので注意しましょう。
ブレーキパッドの役割
そもそもブレーキパッドはなんの為にあるのでしょうか?
車のブレーキにはドラムブレーキとディスクブレーキの2種類があり、近年放熱性に優れ雨にも強いディスクブレーキが主流となっています。
ブレーキパットはディスクブレーキに採用されていて、ディスクローターとブレーキキャリパー、ブレーキパッドの3つで構成されています。
運転席でブレーキペダルを踏むと、その力がブレーキフルードを通じてブレーキキャリパーに伝わり、内部にあるブレーキピストンがディスクローターを挟んでいる2枚のパッドをローターに押し当てることで、摩擦抵抗を発生させ車を減速、停止させています。
ブレーキパッドの検査方法
ブレーキパッドの残厚の確認が出来れば、パッドを交換する必要があるのか分かりますので、確認方法を知りたいですよね。
簡易的ではありますがパッドの厚みを確認する方法を紹介いたします。
- ブレーキのキャリパーが見えやすいようにハンドルを目一杯切っておく。
- 車をジャッキであげる。
- タイヤを取り外す。
- ブレーキキャリパーの横に点検窓があり、ローターを挟み込んでいる2枚のパッドが確認できたら、ものさしや目視で残厚を確認する。
この方法では正確に何mmであるかは分かりませんが、4mm以下の危険な場合は察知することができます。
危険が分かれば、プロに頼むなどの適切な対応が可能です。
いちいち確認が面倒であれば、タイヤ交換時に確認する癖をつければ、年に2回もパッドの残厚点検ができますので、より安心なカーライフを送ることができます。
ユーザー車検の注意点
車検点検時にブレーキパッドの残厚が少なければ交換した方がいいのは伝わったと思いますが、ユーザー車検の場合はどうなのでしょうか?
原則ユーザー車検であっても24ヶ月点検を実施する必要があり、ブレーキも分解し、パッドの残厚を計測し記録するでしょう。
しかし、実際に車検場にてブレーキの検査を行った際に制動力がでれば車検には通ります。
パッドの残厚が1mmでも制動力が出れば検査は通るのです。
車検とはあくまで今の状態が保安基準に適合しているか検査しているだけですので、もし明日ブレーキが効かなくなる状態であっても今問題なければ通るのです。
ユーザー車検は整備の知識、技術がある方が行うと代行手数料や工賃などの節約に繋がりますが、ない人が行うと危険箇所の放置や見逃しにより後に高額修理に繋がったり、重大事故を起こす可能性がかなり高くなりますのでよく考えて行動をして下さい。
ブレーキのトラブルに関するエピソード
今まで数百台の車検整備や一般整備を行ってきましたが、ブレーキに関するトラブルは後を経ちません。
今回はその多くのトラブルの中から1例を紹介します。
あるお客様が異音がすると緊急入庫されました。 自社で整備記録も無く、分解整備記録簿の整備主任者の欄にはお客様ご自身の名前の記載があったことから、ユーザー車検で今まで車検を通していたことが分かりました。
異音を見つける為に走行テストを行いフロントの左ブレーキがロック気味だったのでジャッキアップし確認すると、ブレーキのキャリパーピンが固着しており、固着しているせいでブレーキのパッドの動きが悪くなり、常にブレーキが軽く効いてる状態になっていました。
当然ブレーキのパッドの残厚もかなり少なくなっていて、ブレーキローターにも傷が入っていましたのでパッドとローターを両方交換する必要があります。
軽自動車でしたが工賃を含めて35,000円くらいの費用がかかります。
そのお客様は最初金額に納得しておられませんでしたが、ここまでになると他に方法が無いことを伝えると渋々納得されました。
後で詳しく話を聞いてみると、ブレーキの分解時にキャリパーピンにグリスを塗ったことがないことが判明しました。
分解時に適切に整備されていれば防げた故障、出費ですね。
まとめ
重要保安部品に指定されているほど重要なブレーキパッドですが、車検時に4mm程度であれば交換しておいてもらった方がより重大な問題を引き起こさない為にもいいでしょう。
ブレーキパッドの部品の価格と工賃が車検の基本料の他にかかってきますので車検全体の金額が高くなり、嫌がる方が多くおられるのも事実ですが、上記理由により車検、点検時に交換した方が余計な費用と時間がかかりませんのでぜひ信頼できるお店で依頼してください。