2022年09月14日
ブレーキオイルは車検時に交換が必要?交換時期や費用について解説
車検時に当たり前のように交換を勧められる部品にブレーキオイル(ブレーキフルード)があると思います。 何気なく交換してもらっているオイルですが、ブレーキに必要なオイルなのかな?程度の認識の方は多いと思います。
この記事ではブレーキオイルの役割や交換する理由などを現役整備士が解説します。
ブレーキオイルは車検ごと(2年に1回)の交換がおすすめ
一般的にブレーキオイルは2年~4年、距離にして1万キロ前後が交換推奨となっています。
また推奨年数は2年~4年と長いですが、日本には梅雨があり、湿度がかなり高くなる時期があります。
詳しくは後述しますがブレーキオイルの吸湿性も考えると2年に一度は交換して欲しいのが本音です。
2年に一度または1万キロ前後走行時で、ブレーキオイル交換はタイヤを外して作業する必要がありますので車検の際にブレーキの点検、調整後に合わせて交換をオススメするケースが主となっています。
ブレーキオイル交換にかかる費用
実際にブレーキオイルの交換にはいくらかかるのでしょうか?
軽自動車や普通車によっても異なりますが、普通車(ミニバン)と仮定した場合ブレーキオイル+交換工賃でディーラーでは10000円前後、民間整備工場、ガソリンスタンドでは5000円前後のところが多いようです。 この金額は車検時や点検時ではない時に作業依頼をした場合ですので、車検や点検時には工賃が安くなることが多いです。 中には工賃を半額にしている整備工場もあるくらいです。
これは前述した通り、車検や点検時にはすでに車体がジャッキアップされており、タイヤも外れている為です。
また、ブレーキオイル交換後のタイヤを取り付けて車体を元の状態に戻す作業も車検、点検時には行う作業ですので車検、点検時には純粋にブレーキオイルの交換作業の工賃のみ請求されるので金額が安くなるのです。
ブレーキオイルを交換しなくても車検は通る?
車検時に交換が推奨されているブレーキオイルですが、あくまで推奨なので交換しなくても車検は通ります。 しかし、ブレーキオイルの残量不足により、ブレーキの警告灯が点灯している場合は車検に通りません。
ブレーキオイルの役割
1万キロ程度、2年を目安に交換が推奨されているブレーキオイルですが、どのような役割を果たしていて劣化すると具体的にどのようなデメリットがあるのでしょうか?
項目ごとに分けて詳しく解説します。
役割
ブレーキオイルとはその名の通りブレーキに関する油脂類で、ブレーキを適切かつ安全に動かす為になくてはならない存在です。
私たちが普段乗っている乗用車の多くは油圧式ブレーキを採用しています。このシステムのおかげで私たちは少ない力で、重たい車を停止させるほどの力を得ています。
ブレーキペダルを踏み込むと、ブレーキオイルがブレーキパイプやブレーキホースなどのブレーキオイルで満たされた配管を通り、ブレーキキャリパーやホイールシリンダー内のピストンを押し出し制動力を伝えます。
また、ブレーキペダルの踏む力はマスタシリンダーで油圧に変換され、力を増幅させています。
劣化によるリスク
油圧ブレーキの作動には欠かせないブレーキオイルですが、劣化するとどのような悪影響があるのでしょうか?
ブレーキオイルは吸湿性が高い成分で出来ており、水分量が増えれば増えるほどオイルの沸点が低くなります。
ブレーキは摩擦によって制動力を得ていますので、ブレーキ作動時には高温になります。
当然ブレーキオイルも高温となりますが、この際に水分を多く取り込み劣化しているブレーキオイルだと沸点が下がっているので、ブレーキオイルが沸騰してしまいます。
沸騰すると気泡が生じ、ブレーキシステム内に気泡が混入し、ブレーキキャリパーやホイールシリンダのピストンに十分な油圧が伝わらず、ブレーキの効きにくい状態となり、最終的にはブレーキが効かなくなるペーパーロック現象が起こります。
ブレーキオイル交換のサイン
ブレーキオイルがかなり重要な役割を果たしていることはご理解いただけたと思います。
通常使用されている場合は車検ごとの交換でも基本的に問題ありませんが、頻繁に車を使う、長距離運転が多いなどブレーキオイルに負荷がより掛かる使用をされている方も多いと思います。
ここでは車検時以外でも、ブレーキオイルを交換する際の交換のサインを紹介します。
・ブレーキオイルの色が茶色や焦茶、黒色
新品のブレーキオイルは透明か淡い薄黄色をしています。 その状態から空気中の水分や汚れを取り込むことで劣化し、茶色や焦茶色に変色します。
エンジンルームのブレーキのリザーバータンクを見て茶色や焦茶色になったら交換のサインだと覚えておきましょう。 他にも赤茶色に変色すれはピストンの錆が発生している場合がありますので、早めに点検修理してもらいましょう。 さらにブレーキオイルの劣化が進むと黒色になります。
こうなるとかなり末期ですので、早急に交換してください。
・ブレーキオイルの量
エンジン内にブレーキのリザーバータンクがあり、タンク外側に表示されたMINとMAXのラインの真ん中より下側に液面のラインが来ている、もしくは液面がMINに近づいていたら交換のサインとなります。
ブレーキオイルの液面が減少する原因は、ブレーキパットが摩耗しブレーキのピストンが押し出されているか、ブレーキオイルの漏れのどちらかです。
エンジンオイルは漏れていた場合、雨の日などに反射するので分かりやすいですが、ブレーキオイルは水に溶けますので分かりにくいです。
ですので残量が減っていたら整備工場や、ガソリンスタンドで交換してもらうつもりで点検してもらいましょう。
ブレーキオイルにまつわるエピソード
ここまででブレーキオイルの重要性は十分に理解してもらい、車検時には交換を整備工場やガソリンスタンドに依頼してもらえると思いますが、ダメ押しで私の経験したエピソードをお話しします。
冒頭でもお伝えしましたが、私は車検時には保安基準不適合箇所はもちろん修理や交換をさせて頂きますが、そうではない「直さなくても車検は通るけど直した方がいい箇所」の中でブレーキオイルの交換を最優先にお伝えします。
なぜなら、車検や点検時に同時交換すればあまり費用がかからないのに、ブレーキシステムの中核を担っている為です。
そんなブレーキオイルの交換を怠ったお客様の末路を紹介します。
車検で入庫されたA様のご要望はとにかく安く車検して欲しいとのことでした。
前回の車検も当社でしたので整備履歴を調べると前回も保安基準不適合箇所のみ交換、修理されていました。
当然ブレーキオイルも交換してなく量もだいぶ減っていましたし、色も焦茶色でした。
ブレーキオイルの交換の必要性について十分に説明しましたが、「お金があまりないから車検に通るレベルで修理して欲しい!!」のご要望通り今回も車検に通る最低限の整備のみ行いました。
それから一年後にその車は事故を起こしました。
単独事故で、あまりスピードが出ていなかったので本人や周囲の方にも怪我はありませんでしたが、車の損傷は激しく、任意保険にも加入されていなかったので修理するなら高額な修理代金を払う必要がありました。
結局そのお客様は車を代替(他の車を購入)されましたが、原因はブレーキオイル不足によりブレーキラインにエアーが混入し、ブレーキが突然効きにくくなったことでの事故でした。
数千円の出費をケチった為に何十万、何百万の損をしてしまったのです。
また、今回は他の方を巻き込んでいなかったのでよかったですが、一歩間違えると重大事故につながるおそれもありました。
このように軽視されがちなブレーキオイルの交換ですが、放置しておくと重大な過失を生む恐れのある重要な整備箇所なのです。
まとめ
必ずしも交換が必要ではないブレーキオイルですが、ブレーキオイルを交換しなかった場合のデメリットは計り知れません。
あなただけの事故やミスならまだしも他人やあなたの大切な家族を巻き込む事故を起こす可能性がある箇所だけになるべく信用できる整備工場やガソリンスタンドで交換しましょう。