2021年11月03日
【プロが解説】車のエアコン、長時間利用でバッテリーが上がる?
夏は冷房、冬は暖房と1年を通じて利用する機会の多い車のエアコン。
特にお盆や年末のシーズンは旅行や帰省など、長時間にわたってカーエアコンを利用する機会も多いのではないでしょうか。
長時間稼働すると、今度は「バッテリー上がり」の問題が気になりますよね。
当記事では、カーエアコン長時間利用による「バッテリー上がり」のリスクと、エアコンを頼らず夏冬を快適に過ごす方法について解説します。
エンジンが動いていれば、「バッテリー上がり」のリスクは低い
『リスク』と脅かすような表現をしましたが、結論から言うとエンジンが動いている状態では、「バッテリーあがり」のリスクは低いと言えます。
車はオルタネーターという発電機がエンジンの動力で発電しています。
過剰に発電した電力はバッテリーに蓄えるため、エンジンが動いている限りはバッテリーあがりのリスクは低いのです。
ガソリンが無くならない限りエアコンは連続利用が可能
エンジンが動作し、バッテリー上がりが無い前提で考えれば 理論上はガソリンが無くならない限り、エアコンを使い続ける事が出来ます。
ではどの程度の時間ガソリンが保つのでしょうか? 車種や走行状態によっても異なりあくまで目安ですが、アイドリング状態の乗用車は、アイドリング1時間当たり0.84リットルのガソリンを消費します。
参考:「アイドリング・ストップQ&A」
エアコン利用で10%消費量が増加していると仮定すれば1時間当たり0.92リットルです。 ざっくり計算すると1時間で1リットルのガソリンを消費します。 ですので、
- 軽自動車(燃料タンク30Lの場合)は30時間程度
- 普通車(燃料タンク容量60Lの場合)は60時間程度
は保つ計算となります。
バッテリー上がりのリスクが高くなるケース
基本的にバッテリー上がりのリスクは少ないエアコン利用ですが、 利用状況やバーツの劣化具合によって、当然ながらリスクは高くなります。
発電量より消費量の方が多い。
オルタネーターで発電できる電力には限りがあります。 通常であれば、消費量が発電量を上回ることはありません。
ただし、
- ヘッドライト・オーディオ・カーナビなど電源を過剰にとっている
- オルタネーター劣化などにより発電量が低下している
といった状態では消費量が発電量を上回るため「バッテリーあがり」のリスクが高くなります
バッテリーの劣化
バッテリーが劣化していくと、電気を蓄えられる量が減ってしまいます。 オルタネーターで発電しても、バッテリーに蓄えることができなければ、必然的にバッテリーがあがってしまいます。
走行よりアイドリングが多い
ガソリン車の場合、エンジンの回転運動をベルトによってオルタネーターに伝え駆動しています。走行中はエンジンの回転が高いのでオルタネーターもたくさん駆動され、発電量も多いです。
しかしアイドリング状態が多いとエンジン回転も低いので、オルタネーターもあまり駆動されません。
そのため発電量も少なくなってしまいます。
エンジン停止状態ではエアコンが効かない
エンジンが動いている場合はガソリンが無くならない限り、理論上はバッテリーに問題がないことは分かりました。エンジン停止状態ではどうでしょうか?
結論、エンジンが停止するとエアコンは効きません(送風はできる)
なぜエンジンが停止していると、エアコンが効かないのでしょうか?
エアコンのメインシステムであるエアコンコンプレッサーは、オルタネーター同様エンジンの回転エネルギーを、ベルトによって伝えることで駆動しています。 エンジンが止まっていると回転エネルギーを得ることができないのでコンプレッサーは作動できないのです。
アイドリングストップ搭載車の一部で、コンプレッサーが作動していなくても一時的に冷える車もありますが、あくまで信号待ちでエアコンが効く程度です。長時間の冷えは期待できないでしょう。
電気自動車の場合はガソリン車と異なる
ガソリン車の場合は、エンジンを停止してしまうとエアコンは効きませんが、電気自動車であればエアコンが効きます。 ガソリン車は前述した通り、エンジンの回転を利用してコンプレッサーを駆動しているので、エンジンを停止してしまうとコンプレッサーが駆動できず、エアコンが効きません。 電気自動車の場合は、ベルト駆動ではなく電動コンプレッサー式のエアコンを採用しています。 電気を消費して走行する電気自動車だから採用できているシステムです。 メリットだらけのように思える電動コンプレッサーですが、デメリットもあります。
エアコンを使用すると航続可能距離が減る。
コンプレッサーも走行するためのモーターも電気を使用しているため、車を停止させてエアコンをかけていても電力を消費します。 車を充電できる場所も、ガソリンスタンドほど多くありませんので、長時間使用する場合はあらかじめ充電のことも頭に入れておいた方がいいでしょう。
夏より冬の電力消費が大きい
冬になり気温が下がると、バッテリーの電解水の動きが悪くなることで、充電時間が長くなったり、充電容量が少なくなったりします。
またガソリン車の場合、ヒーターを使用する際にエンジンからの排熱を利用できるので、あまり燃費に影響はありません。
しかし、電気自動車の場合はエンジンがないので排熱が利用できず、一から温めなければなりませんので、夏より冬の電力消費が大きくなってしまうのです。
消費電力を押さえバッテリー上がりのリスクを抑えるには
消費電力を抑えて、バッテリー持ちをよくするにはどうすればよいのでしょうか?
安全な場所に停車しているならライトを消す
車のヘッドライト、テールライトも電力を消費します。安全な場所に停車している状態であれば、消しておくことで消費電力を抑えることができます。
オーディオの音量を抑える
オーディオの音量が大きければ、多くの電力を消費します。 オーディオの音量を抑えたり、ウーファーのボリュームを下げたりすることで、消費電力を抑えることができます。
冷房の「送風量」を抑える。設定温度を極端に下げすぎたり上げすぎない。
ご自宅のエアコンを想像していただけると分かりやすいと思いますが、設定温度が低すぎたり、高すぎたりすると高額の電気料金がくることは想像できますよね。
車も同じでエコを心がけて使用すれば消費電力を抑えることができます。
車のエアコンに頼らず快適に車内で過ごす方法
車のエアコンに頼らず車内を快適に過ごすことができれば、バッテリーを気にすることはありませんよね。
また、使用頻度や時間も減らせるかもしれません。
夏場の対策、冬場の対策に分けて解説します。
夏場の対策
- 首や頭にまく冷感グッズを利用する
- (車中泊であれば)冷感敷きパッド
- サンシェード
- ポータブルエアコン、ポータブル扇風機
これらのグッズを使用することである程度の暑さをしのぐことができます。 ポータブルエアコン、ポータブル扇風機は車のシガーソケットや、モバイルバッテリーから電源をとれるものがあります。
バッテリーのことを考えるとモバイルバッテリーから電源のとれるものがおすすめです。
冬場の対策
- ひざ掛け
- 断熱シート
- 電気ヒーター
走行中であっても膝掛けや電気ヒーターを使用することで、暖かく過ごすことができます。
まとめ
長時間のエアコンの使用が、バッテリーに与える影響について解説しました
過剰な電力使用やバッテリーの劣化などが無ければ、「バッテリー上がり」の心配はありません。 しかし、各部品の劣化は自分自身では判断が難しいと思います。 バッテリーの点検は無料で受けているお店も多いので、快適なドライブを実現するために定期的にお近くのお店で点検してもらうことをお勧めします。